zumafish's diary

忘れたくないこと

ノスタルジア・マーケティング

最も効果的な宣伝とは古き良き時代を思わせること。古くて新しいノスタルジア・マーケティングは思い出を商品に結びつける。昔話が始まると、子供のころに流行っていた曲やテレビ番組が今流行のものよりも良いと感じる傾向がある。99%の割合で、人は自分の初体験に最大の喜びを感じるものだ。どんな話でも初めて聞いたときの内容が二度目、三度目に聞いた内容の方が面白くて正確だと思う。

初めての体験を良く見せることは、人間である私たちが自分の過去は完全なものであると思い込まされているためである。これを促すものとはノスタルジアという名前の単純ながら強力な説得者である。人の脳は過去を実際により良いものとして思い出すように作られているらしい。

ノスタルジアとは実際に健康に良い。ある研究結果によると、思い出に浸ることは時間の無駄や不健康な逃避ではなく、気分を高揚させ、自信を高め、人との絆を強めるらしい。更に同じ研究で、ノスタルジックになれる人物は「人間関係を築く能力」「他の人に正直な気持ちを伝える能力」「友人の精神的な支えになれる能力」の3分野において顕著に上であったという。ノスタルジックな気持ちは幸せな気分を生む。

更に思い出の中では不愉快な記憶は消え、良い部分だけ残る。しかも実際以上に増幅もされる。もし記憶が本物でないと分かったとしても、その意味や楽しみも減ることはない。出来事の記憶は、実体験以上に重要なのである。

そして人生にはそうした強い記憶や体験が形成される特別な瞬間や時期があり、無意識に生涯使い続けるブランドや聴き続ける音楽が決まることがある。35歳を過ぎると95%以上の人が新しいポップミュージックを聴こうとしなくなるらしい。大体20代に出会った音楽を生涯に渡って愛し続ける。

ノスタルジアに訴えるマーケティングは永続性があり、効果抜群である。30-40代の消費者に暮らしがもっとシンプルであった時代の雰囲気をそれとなく匂わせることもあり、昔のブランドそのものを復活させる場合もある。ある調査ではブランドの歴史が深いほど、質の善し悪し関係なく好感をもって受け止められるという。主な理由は懐かしい品物を見ると初めて出会った世界をもう一度追体験できるかららしい。昔の方がシンプルで安心で趣があったという幻想をコントロールして多くの企業が広告イメージ形成に利用している。